本人体験記 ⑤
S.K
『退院一年を迎えて』
会員
成増厚生病院から三度目の退院をして一年が経ちました。
最近、ようやく長いトンネルから抜けられたのかなぁと思っています。
一度目の入院は2004年1月、二度目は2006年1月でした。(病院に確認依頼してわかったことです)
前回の入院から12年経過して三度目の入院でしたが、最近その計15年間(退院してからの1年間も含め)が飲酒する事をあきらめる治療期間だったのだと思える様になりました。
一回目、二回目共退院後は断酒生活を継続していこうと数か月思うのですが、少しくらいの気持ちが芽生えてしまい、何時しか元の生活に近い状況になってしまいました。しかし、二度の入院経験は自分にとって無駄であったとは思っていません。
入院中に聞く体験談は自分の経験とはかけ離れた激しいものが多く、自分はそこまでは行っていないと思わされるものが多く有りました。
退院後、断酒を続けていて体調が良くなった事も有り、少し位の飲酒なら自分はコントロール出来るのではないかと思い始め、同時に断酒会からも離れてしまいました。
その後、数々の会社を転々としましたが、その全てが酒に関する事が原因であった事は言うまでも有りません。しかし、そんな生活を繰り返しながらも、12年間生きて来られたのは二度の入院生活の経験が歯止めになっていた様に今となっては思えます。
昨年1月、退職と息子の結婚を機に、今後自分は断酒をしていくべきだと思い、その為には病院と断酒会の助けが無いと実行出来ない事を知っていたので、入院経験の有る成増厚生病院に入院する事にしました。入院後、断酒会に通い始めて改めて分かった事ですが、自分は間違いなくアルコール依存症であること、アルコール依存症には多種多様な症状が有り、100人100色で有る事、治療法(正確には発症予防法)は自分で見つけて行くしかないと言う事でした。
12年間、自分を騙し、他人を騙し、家族を騙し、何とか命を繋げて来られたのは、自分が急激な連続飲酒をするタイプでは無かっただけで、間違いなくアルコール依存症者であり、今後酒を飲むべきではないと言う事が分かりました。
今後も、様々な方のお話を伺い、舗装されていなくともトンネルのない道を一歩一歩進んで行きたいと思っています。
(この文章は『こぶし』平成31年3月号に掲載されました)