本人体験記 ③
M.F
『酒害者よ、群(むれ)になろう』
​会員

 私は新緑の4月に50歳で入会致しまして38年になりました。これは会の皆様の支援のお陰です。先輩が断酒会は例会にまめに出るように言われたことを続けたからだと思います。現在の身体状況は大体健康だと思います。そして断酒すると健康状態が良くなると信じています。
 私は若い頃から飲酒することは悪いことではなくて、社交上の必要条件だと思っていました。私の実家では来客が多く、お茶代わりにコップ酒を出しておりました。従って日本酒が台所に数本は置いており、家族も抵抗なく客に出しておりました。勿論父も祖父も大酒呑みでした。ところが、私は酒が弱く直ぐ崩れるタイプでした。そのくせダラダラ長時間飲んでいました。狂い出したのは35歳以降だと思います。友達が「お前の酒がどうもオカシイ」と何度も指摘されても自分では分かりませんでした。年を取るにつれて段々ヒドクなりました。その頃家内が新聞広告で断酒会を知り入会したのは41歳頃でした。今考えて見れば東京断酒会の初期時代だと思います。断酒会の例会場は、1か所で月に1回のみの例会でした。出席者は25名位集まって来る程度でした。当然今のような支部、近県にも断酒会はありません。私も1年位しか出席しておりません。その後会社の異動命令があり、私は横浜の方へ変わり、また飲み始めて50歳で再入会し、現在に至っております。

 

 入会前の数年間は狂った飲酒を続けて家族に苦労を掛けてきました。何時も午前様で終電に間に合わず、タクシーで帰ることが多くなりました。現在の健康を保っていることが不思議なくらいです。
 50歳でやっと酒害に気が付き現在に至っております。
 例会出席にはどんな力が働いているのか、どんな効果があるのか分かりませんが、集団の効果があることは誰でも認めるところでしょう。
 家に閉じこもって一人で断酒継続しようとしても永続きしません。例会に出席して初めて可能なのです。集団的治療法と申すべきか、又集団的心理効果と申す方が良いのか分かりませんが、仲間が多い方が良いと思います。
 先輩が例会で体験談を話せと言いますが、一口で言えば悪い飲酒歴を話して反省しろとのことだろうと思います。個人ではなく集団の大きな力でアルコール依存症を治すということだろうと思います。
 何十年も前の事ですがテレビで北極地方を走っているトナカイの大群を見て、それを狙う狼(おおかみ)が如何にしてトナカイを群(むれ)から分離させるかが問題で群れを離れたら、それを狙えばいとも簡単に仕留めるシーンを見ました。個々では無力なトナカイが大群を形成すれば、肉食動物もお手上げなのです。我々酒害者も弱いトナカイと同じではないでしょうか。我々も大きな輪になって立ち向かっていけば、強い力になって断酒出来ると思います。全ての動物界も生存の論理が同じだろうと思います。
 我々はアルコールに弱い人間ですが、例会の輪の中に入れば断酒は間違いありません。私も若い頃から家族に苦労を掛けてきました。50歳で初めて気が付き、現在に至っております。

 

 米寿を過ぎて大変な高齢の老人になりましたが、過去を謙虚に受け止め、深く反省して我が人生を全うしたいと思っています。
 最後は私の個人の力ではなく皆様の力によるところが大きいと思っています。深く感謝申し上げる次第であります。

 

(この文章は『こぶし』平成26年4月号に掲載されました)

©️ AZUMA, Hideo  2013

©️ NPO法人 練馬断酒会